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STORY

  • 物語は停電の夜から始まる。(仮に停電が何の前触れもなく訪れるものだとして)
  • 結婚式前夜。(仮に結婚式が女にとって幸せな日だとして)
  • 向かい合って座る女と男。(仮に男が見ているのは女ではないとして)
  • 女は翌日、34年間の人生で貯めてきたものを捨てる。
  • それは、「靴」「お金」「招待状」「口紅」「お別れの挨拶」そして、「夜」。(仮に「夜」を貯めることができるとして)
  • そして、女は車を盗んで旅に出る。(仮に旅というものが何かを盗むことで始まるとして)
  • 女が盗んだ車の中にはメッセージが残されていた。
  • 「海からきたのか。海に向かうのか。」(仮に海が待ってくれているものだとして)
  • 旅の中で女は様々な人と出会っていく。
  • 何十年も娘を待ち続ける裸足の老人。(仮に娘が父のところに帰ってくることはないとして)
  • タイプライターを拾ったゴミ焼却場で働く若い男。(仮にタイプライターが捨てられたものであるとして)
  • クジラの話をする鯖節工場で働く若い男。(仮にそのクジラが死んでしまうとして)
  • 生まれて初めて手紙をもらった盲目の少女。(仮に少女の目は見えていないとして)
  • 出会いと別れを繰り返しながら女の旅は進んでいく。(仮に出会いと別れの数が等しいものであるとして)
  • 都市から海へと向かうピアニッシモな逃避行と世界の目覚めを描くロードムービー。
  • カラフルな夜が訪れるとき、ひとつの朝が始まりを迎える。
  • (仮に夜はながくないとして)

監督メッセージ

世界は大きな夜に包まれているような気がしている。

ドキュメンタリー映画『グレーのバリエーション』を公開してから2年が経ち、その間僕の中で映画を作りたいという気持ちは生まれなかった。
2011年3月11日の震災を経験した僕は、無常観とともに熊本へ一度帰った。
そこで、一緒に映画を作りたいという人々と出会いこの映画が生まれようとしている。

またやって来たからといって
春を恨んだりはしない
例年のように自分の義務を
果たしているからといって
春を責めたりはしない

わかっている わたしがいくら悲しくても
そのせいで緑の萌えるのが止まったりはしないと

(『終わりと始まり』ヴィスワヴァ・シンボルスカ著/沼野充義訳より)

この言葉は、僕が愛する詩人ヴィスワヴァ・シンボルスカの『眺めとの別れ』という詩の一節。
人は確かにわかっている。
それでも確認したいから何かを生み出すのだと僕は思っている。
それは、希望なのかもしれない。

世界は大きな夜に包まれているような気がしているが、同時に宇宙によって所有されている気もしている。

「夜はみじかい」ということではなく、ただ「夜はながくない」というただそれだけの希望を描く。

遠山 昇司


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